和柄を描こう!③ 和柄はなぜ洋服になじまないのか?
そろそろ和柄の作成に入りたいですが、その前にもう一つ「和柄はなぜ洋服になじまないのか」という話をさせてください。
一つは日本人が和柄を見ると和柄を見つけてしまうから。これはどうしようも無い。人が柄から受ける印象にはその人の記憶の歴史が詰まっているので他人にはコントロール出来ません。
もう一つは「派手すぎるから」。
これはコントロール出来ますね。地味にすれば良い訳ですから。
なぜ派手かというと、日本にはもともとハレとケの文化があって、良く目にするいわゆる「和柄」はハレの日用のデザインだからです。
「本日の主役」用の衣装のためのデザインなんですね。
下手すると衣装の方が主役だったりして。
これはね、非常に日本人らしい文化なんですよ。
お隣の大陸でさえ、服の方が主役っていうことは無いですよ。あんまり。
ものすごく民族的な意匠なのです。
和服っていうのは平面で構成されていて、柄が主役なのでかなり派手な物でも受け止めてくれます。それに派手な物を着るときはそれに合わせて髪型も化粧も派手になるので負けないのです。
一方洋服というのはフォルムが主役です。柄はあくまでも脇役です。(例外も有ります。スコットランドのタータンチェックスカートとか。柄をどの程度重用するかというのは民族性が色濃く出てうんぬん……)
フォルムが主役なので、平面で構成された柄が強すぎると全体のバランスを崩してしまう訳です。
フォルムが主役というのはどういうことかというと、つまり着用者の身体のラインを拾っているということです。女性の場合は特に身体の曲線を強調させます。胸、腰、お尻、ですね。
そこに直線的なデジタルで作画したような柄を持ってくると、直線と曲線がケンカしてしまうのです。
色もそうです。和柄の色使いはハレの日用なので、日常着に使うには派手すぎるのです。
例えば和柄といえば赤ですが、なぜかというとお祝いに用いられる色だからですよね。
日本人は脇役はでしゃばっちゃいけないというか、主役は確固として主役じゃなきゃいけない。
誰にも負けないくらい派手じゃなきゃいけないわけです。
だからこそ見る人の印象に強く残って、好きな人を増やしてきた訳ですが、それをケの日の普通の洋服にもってくると派手過ぎる訳です。
フォルムが色に負けてしまうのですね。設計思想がぶつかってしまうのです。
じゃあどうしたらいいのかって言うと、方法は二つ有って一つはキャラクターの方を柄に負けないくらい派手なデザインにする。頭を大きくするとか目鼻立ちを派手にするとかですね。
もう一方で和柄の方はなるべく地味にする。
両方やってちょうど良くバランスのとれる点を探すと良いデザインになると思います。
じゃあ和柄を地味にしましょうか。
と、言っても実はもうあるのですけどね。
そうですケのデザインです。
例えば浴衣のデザインなんか良いですよね。
キャラクターイラストで浴衣姿が好まれるのは、現代的な(地味な)キャラクターデザインとケンカしないからなんですね。
でも、浴衣柄って浴衣以外に使ったら変だし、それに私はもっと派手な宝づくしとか、有職文様とかが好きなの!と思ったあなた、通ですね。
そうですね。ケの意匠の研究は他に譲って今回はハレの日の振り袖で使われる様な振り袖みたいな柄を作りましょうね。
和柄はやっぱり派手じゃないと。
と言うわけで次回はいよいよ実際の作図です。